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物流倉庫の自動化|失敗しない3つのステップと段階的な導入方法

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人手不足、EC需要の急増や「2024年問題」など、物流業界を取り巻く環境はますます厳しさを増しています。こうした課題を解決する切り札として注目されているのが「物流倉庫の自動化」です。
しかし、「何から始めればいいかわからない」「高額な投資は難しい」といった不安から、導入に踏み切れない企業も多いのではないでしょうか。
この記事では、失敗しない倉庫自動化の進め方を3つのステップで解説し、具体的な課題を解決する6つの方法と導入メリット&成功事例を詳しくご紹介します。
より詳しく「物流自動化とは?」について知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
物流自動化とは?倉庫のムダをなくし、現場に合わせて導入する方法
1.自動化導入の3つのステップ

いきなり高価なロボットを導入しても、現場の課題と合っていなければ宝の持ち腐れです。成功の鍵は、正しい手順で自社の課題を正確に把握することにあります。
ステップ1:自社の倉庫を「健康診断」してみよう
まずは、自社の倉庫がどのような状態にあるのか、客観的なデータで「見える化」することが重要です。人間が健康診断を受けるように、倉庫の現状を正確に把握しましょう。
- 出荷数(日次・月次): 繁閑の波はどのくらいあるか?
- 作業者の移動距離や作業時間: 誰が、どこで、何に時間を使っているか?
- 発生しているミスやボトルネックの工程: どんなミスが、どの工程で頻発しているか?
これらのデータを集めることで、感覚ではなく事実に基づいた課題分析が可能になります。
ステップ2:一番の悩みを特定する
倉庫の状態が見えたら、次は「最も優先すべき課題」にフォーカスします。すべての問題を一度に解決しようとせず、最も効果が期待できる一点に絞り込むことが成功の秘訣です。
- 出荷先ごとの仕分け作業が煩雑でミスが多い
- ピッキング後の搬送作業に多くの時間がかかっている
- ピッキング作業にムダな動線が多く、作業者が疲弊している
このように課題を具体化することで、導入すべきソリューションが明確になります。
ステップ3:フル自動化じゃなく、「試せる自動化」から
課題が特定できたら、いよいよ自動化の検討です。しかし、ここで大規模なフルオートメーションを目指す必要はありません。まずは、効果が実感しやすく、小さくはじめられる「試せる自動化」からスタートしましょう。
特に、自動化の効果を実感しやすいのが「搬送」の工程です。ピッキング後の商品を運んだり、出荷口まで搬送したりといった作業者の移動距離を減らすだけで、生産性は劇的に向上します。
なぜ搬送の自動化が有効なのか?
- 作業者の「歩く時間」を削減するだけで、生産性が大幅に向上する
- 工程がシンプルなので効果が見えやすく、投資対効果を実感しやすい
- 一定のルートに沿った運搬であれば、設計や運用のハードルが低い
2. 物流自動化導入のメリットと注意点
自動化の導入は、コストだけでなく多くのメリットをもたらします。
導入のメリット
・生産性の向上と省人化:単純作業や搬送作業を自動化することで、人はより付加価値の高い業務に集中でき、全体の生産性が向上します。
・作業品質の安定化:機械は24時間365日、一定の品質で作業を続けます。ヒューマンエラーが減り、顧客満足度の向上にも繋がります。
・労働環境の改善:重量物の搬送や長距離の歩行といった身体的負担の大きい作業を機械に任せることで、誰でも働きやすい安全な職場環境を実現できます。
・省スペース化:自動倉庫や垂直搬送機を活用することで、これまでデッドスペースだった上部空間を有効活用し、保管効率を高められます。
・データ活用による業務改善:WMSや各種機器から得られるデータを分析することで、ボトルネックの発見やさらなる改善活動に繋げることができます。
導入時の注意点
目的の明確化:「自動化」自体が目的にならないよう、ステップ1・2で特定した課題を常に意識することが重要です。
現場との連携:実際にシステムを使うのは現場の作業員です。導入前から情報共有を行い、協力体制を築くことがスムーズな運用の鍵となります。
3.知っておきたい!倉庫自動化を支える6つの主要設備
1. WMS(倉庫管理システム)
WMS(Warehouse Management System)は、倉庫内の「モノ」と「情報」を一元管理する頭脳のようなシステムです。入荷から保管、ピッキング、検品、出荷まで、すべての工程の在庫情報や作業進捗をリアルタイムで可視化。作業の標準化や効率化、ヒューマンエラーの削減に繋がり、すべての自動化の基盤となります。
2. 自動倉庫システム(自動ラック)
スタッカークレーン式、垂直リフト式、回転式、移動ラック式など、様々なタイプの自動ラックにより、商品の入出庫や保管を全自動で行うシステムです。高層化による空間の有効活用と、正確な在庫管理を実現。多品種少量から少品種大量まで、幅広い保管ニーズに対応可能です。
3. コンベヤ・搬送システム
荷物を載せて自動で搬送する、物流現場の基本となるマテハン機器です。単純な搬送だけでなく、分岐や合流、仕分けなどの機能を組み合わせることで、倉庫内のモノの流れを劇的に効率化します。自動ラックと各作業エリアを繋ぐ「大動脈」として、倉庫全体のスループットを左右する重要な設備です。
4. AGV / AMR(無人搬送ロボット)
AGV(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)は、人やフォークリフトに代わって棚やパレット、カートなどを自動で搬送するロボットです。床に貼られた磁気テープなどを頼りに決められたルートを走行するAGVに対し、AMRは自ら地図を作成し、障害物を避けながら最適なルートを走行できるのが特徴です。固定のコンベヤでは対応できない柔軟な搬送ルートを実現し、歩行作業の削減に絶大な効果を発揮します。
5. ピッキング支援システム
ピッキングは倉庫作業で最も時間と労力がかかる工程であり、自動化・効率化のニーズが非常に高い分野です。
・デジタルピッキングシステム(DPS)
棚に設置されたデジタル表示器の指示に従ってピッキングする方法。リストを見る手間が省け、ミスを削減します。
・ゲートアソートシステム(GAS)
商品をゲートにスキャンすると、投入すべき間口のランプが点灯するシステム。店舗別仕分けなどで高い効果を発揮します。
・ピッキングロボット
AI技術とロボットアームを組み合わせ、ピッキング作業そのものを自動化。人手不足への抜本的な解決策として注目されています。
6. 自動仕分けシステム(ソーター)
コンベヤ上を流れてくる荷物のバーコードなどを読み取り、方面や店舗、配送ルートごとに自動で仕分けるシステムです。クロスベルトソーター、スライドシューソーター、ポップアップソーターなど様々な方式があり、出荷工程のスピードと精度を飛躍的に向上させます。EC物流の多品種・小ロット化に対応する上で、特に重要性が高まっている設備です。
4. 伊東電機が提案する「無理なく始める」物流自動化ソリューション
「自動化の進め方はわかったけど、実際にどんな機器を選べばいいの?」
そんな声にお応えして、伊東電機が提供する課題解決型の自動化ソリューションを、目的別にご紹介します。
課題①:「歩く・運ぶ」をとにかく減らしたい!【基本の搬送自動化】

ソリューション:モジュール式コンベヤ「id-PAC(アイディーパック)」
現場の「歩く」をなくす、はじめの一歩に最適なソリューションです。標準化された搬送モジュールをレゴブロックのように組み合わせるだけで、誰でも簡単に最適な搬送ラインが構築できます。コア技術のMDR(モータードライブローラー)を搭載しているため、必要な部分だけ動いて省エネ。後からの拡張や変更も容易です。
<こんな現場におすすめ>
- ピッキングエリアと梱包エリアが離れており、作業者が台車で行き来している。
- 一日中歩き回る作業が多く、スタッフの身体的負担が大きい。
- まずは特定の工程だけでも自動化し、効果を試してみたい。
課題②:「仕分けミス・遅延」をなくしたい!【高速仕分け自動化】
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ソリューション:高速仕分けユニット「F-RAT-NX75」
多品種・小ロット化が進むEC物流の現場に最適な、コンパクトな高速仕分け機です。限られたスペースでも、バーコードを読み取って瞬時に方面別に仕分けることで、スピードと精度を両立させます。
<こんな現場におすすめ>
- ECサイトを運営しており、個人向けの細かい仕分け作業に追われている。
- 出荷検品後の店舗別・方面別仕分けで人為的ミスが多発している。
- 倉庫のスペースが限られており、大規模なソーター(仕分け機)は置けない。
課題③:「フォークリフトが危ない・置き場がない」を解決したい!【重量物搬送の自動化】

ソリューション:MDR式パレット搬送モジュール
フォークリフトによる搬送作業は、事故のリスクやオペレーターへの業務集中といった課題を抱えがちです。このソリューションは、パレットの自動搬送・保管・整列までをスマートに行い、安全で効率的な現場を実現します。MDRの力でパレット自身が動くため、クレーンなどの大掛かりな設備が不要で、メンテナンス性にも優れています。
<こんな現場におすすめ>
- フォークリフトと作業者が同じ空間で作業しており、ヒヤリハットが多い。
- 原料や完成品が載ったパレットの移動・一時保管を自動化したい。
- 有資格者であるフォークリフトオペレーターの不足に悩んでいる
5. 【導入成功事例】伊東電機のソリューションで課題解決!
伊東電機の自動化ソリューションは、さまざまな業界の物流現場で課題解決に貢献しています。ここでは、その一例をご紹介します。
サンユレック株式会社様:
厳しい品質規格で要求される「原料管理の徹底」を伊東電機のソリューションで解決

樹脂開発メーカーであるサンユレック株式会社様は、自動車業界の厳しい品質管理規格の認証取得に向け、原料管理の徹底、特に「完璧な先入れ先出し」が最重要課題でした。
【伊東電機との出会い】
その解決策を探されていた2017年、展示会で私たちのブースにお立ち寄りいただいたのが、このプロジェクトのはじまりでした。
担当者様の目に留まったのが、私たちの独自技術を結集した流体自動倉庫『オートパレットシーケンシングシステム(APSS)』です。パレット自身がMDR(モータードライブローラー)の力で自律的に動くその姿をご覧になり、「これなら自社の課題を解決できるかもしれない」と、強い関心をお寄せいただきました。
【導入ソリューションと選定の決め手】
比較検討の結果、以下の3点が決め手となり、弊社の『APSS』をご採用いただきました。
- 完璧な原料管理の実現: 基幹システムと連携し、品質規格の必須条件である完璧な先入れ先出しとトレーサビリティを実現できる点。
- 圧倒的なメンテナンス性とコスト効率: 法定点検が不要でラインを止める必要がなく、年間のメンテナンスコストも大幅に削減できる点。
- 顧客ニーズへの柔軟な技術対応力: 重量1tの原料保管といったご要望にも、カスタマイズで対応できる技術力とサポート姿勢。
【導入後の効果】
APSS導入により、厳格な原料管理体制を構築。見事、厳しい品質管理規格の認証取得に成功しました。システム上で在庫状況が「見える化」されたことで棚卸し作業も不要になり、生産性向上と品質安定化を同時に達成しています。「メンテナンスのしやすさやランニングコストの安さも大きかった。導入課題に親身になって対応してくれた」と、技術力とサポート体制の両面で高い評価をいただいています。
ここからは、その他の導入事例をご紹介します。貴社の課題に近い事例がきっと見つかります。ぜひご覧ください。
6. 伊東電機にご相談ください
物流倉庫の自動化は、もはや避けては通れない道です。しかし、成功のためにはいきなり高額な機器を導入するのではなく、「現場を正しく見て、課題を一つに絞り、まずは小さく試してみる」というステップが非常に重要です。
今回ご紹介した「搬送」の自動化は、その第一歩として最適です。まずは自社の倉庫を健康診断することからはじめてみてはいかがでしょうか。
導入にあたっては、以下のような補助金・税制優遇制度も活用可能です。伊東電機では、御社に最適な補助金をご提案しながら、スムーズな導入をサポートいたします。
■事業再構築補助金
■中小企業投資促進税制
■中小企業経営強化税制
■ものづくり補助金
少しでもご興味をお持ちいただけましたら、ぜひお気軽に伊東電機までお問い合わせください。物流のプロフェッショナルが、貴社の課題に最適なソリューションをご提案いたします。



